糖尿病

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が慢性的に高くなる代謝疾患で、適切な管理が行われないと、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。以下に、糖尿病に関する詳細な情報を項目別にまとめました。

1.糖尿病とは
2.症状
3.合併症
4.検査と診断
5.治療方法

1. 糖尿病とは

糖尿病は、インスリンの分泌量や作用に問題が生じ、血糖値が高い状態が持続する疾患です。主に以下の2つのタイプがあります:

  • 1型糖尿病:自己免疫反応により膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊され、インスリンがほとんど、または全く分泌されなくなるタイプです。主に若年層で発症します。
  • 2型糖尿病:インスリンの分泌量が不足したり、インスリンの作用が低下(インスリン抵抗性)したりすることで発症します。生活習慣や遺伝的要因が関与しており、中高年に多いですが、近年では若年層にも増加しています。

2. 症状

糖尿病の初期段階では、自覚症状がほとんどないことが多いですが、進行すると以下の症状が現れることがあります:

  • 多尿:頻繁に尿が出る。
  • 口渇:喉の渇きを強く感じる。
  • 体重減少:食事量は変わらないのに体重が減る。
  • 疲労感:常に疲れを感じる。
  • 視力低下:視界がぼやける。

これらの症状に気づいた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。

3.合併症

糖尿病は、適切な管理が行われないと、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。これらの合併症は、大きく急性合併症と慢性合併症に分類されます。

急性合併症

1. 低血糖

血糖値が過度に低下した状態で、主に以下の原因で発生します:

  • 薬物の過剰投与
  • 食事の摂取不足
  • 過度の運動

症状としては、発汗、震え、動悸、めまい、意識障害などが現れます。重症の場合、意識喪失やけいれんを引き起こすことがあります。

2. 糖尿病ケトアシドーシス(DKA)

主に1型糖尿病患者に見られる状態で、インスリン不足により血中のケトン体が増加し、血液が酸性になることを指します。症状として、口渇、多尿、倦怠感、腹痛、嘔吐、呼気の甘酸っぱい臭いなどが現れます。適切な治療が行われない場合、昏睡状態に陥ることがあります。

3. 高浸透圧高血糖症候群(HHS)

主に2型糖尿病患者に見られる状態で、極度の高血糖と脱水が特徴です。症状として、口渇、頻尿、脱力感、視力障害、意識混濁などが現れます。重症の場合、昏睡状態に至ることがあります。

慢性合併症

1. 大血管障害

糖尿病は動脈硬化を促進し、以下の疾患のリスクを高めます:

  • 心血管疾患:狭心症、心筋梗塞など
  • 脳血管疾患:脳梗塞、脳出血など
  • 末梢動脈疾患:下肢の血流障害による間欠性跛行や足潰瘍など

2. 微小血管障害

細小血管の障害により、以下の合併症が発生します:

  • 糖尿病網膜症:眼底の血管が損傷し、視力低下や失明の原因となります。
  • 糖尿病腎症:腎臓の機能が低下し、最終的に腎不全に至ることがあります。
  • 糖尿病神経障害:末梢神経の損傷により、手足のしびれや痛み、感覚鈍麻などが現れます。

3. 糖尿病足病変

神経障害や血流障害により、足に潰瘍や感染症が生じやすくなります。適切な治療が行われない場合、最悪の場合、足の切断が必要になることもあります。

4. 歯周病

糖尿病患者は歯周病のリスクが高く、歯茎の腫れや出血、歯のぐらつきなどが見られます。

4. 検査と診断

糖尿病の診断には、主に以下の検査が行われます:

  • 血糖値測定:空腹時血糖値や随時血糖値を測定します。空腹時血糖値が126 mg/dL以上、または随時血糖値が200 mg/dL以上の場合、糖尿病が疑われます。
  • HbA1c測定:過去1〜2ヶ月間の平均血糖値を反映する指標で、6.5%以上で糖尿病と診断されることがあります。
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT):ブドウ糖溶液を飲んだ後、一定時間ごとに血糖値を測定し、糖代謝の状態を評価します。

また、尿検査で尿糖や尿中アルブミンを調べ、腎機能の状態を確認することもあります。

5. 治療方法

糖尿病の治療は、主に以下の方法で行われます:

生活習慣の改善:

  • 食事療法:適切なカロリー摂取と栄養バランスの取れた食事を心がけます。特に、炭水化物の摂取量やタイミングに注意を払います。
  • 運動療法:定期的な有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を行い、インスリン感受性の向上や体重管理を目指します。

薬物療法:

生活習慣の改善だけでは血糖値のコントロールが難しい場合、薬物療法が検討されます。主な薬剤には以下のものがあります:

  • ビグアナイド薬(メトホルミン):肝臓での糖新生を抑制し、インスリン感受性を高めます。
  • スルホニル尿素薬(SU薬):膵臓からのインスリン分泌を促進します。
  • 速効型インスリン分泌促進薬:食事に合わせて速やかにインスリン分泌を促します。
  • DPP-4阻害薬:インクレチンホルモンの分解を抑制し、インスリン分泌を促進します。
  • GLP-1受容体作動薬:インクレチンホルモンの作用を模倣し、インスリン分泌を促進するとともに、食欲抑制効果もあります。
  • SGLT2阻害薬:腎臓での糖の再吸収を抑制し、尿中に糖を排出します。
  • チアゾリジン薬:インスリン抵抗性を改善します。

これらの糖尿病の薬物療法は、患者さんの病状や生活習慣に応じて適切な薬剤を選択することが重要です。また近年は、以下のような新しい薬剤や治療法が開発され、治療の選択肢が広がっています。

GIP/GLP-1受容体作動薬:

新たに登場した薬剤として、GIPとGLP-1の両方の受容体に作用する作動薬があります。これらは、インスリン分泌の促進や食欲抑制、体重減少効果が期待され、血糖コントロールの改善に寄与します。

週1回投与の持効型インスリン製剤:

従来のインスリン療法では、1日1回以上の注射が必要でしたが、最近では週1回の投与で効果を発揮する持効型インスリン製剤が開発されています。これにより、患者さんの負担軽減や治療の継続性向上が期待されています。

これらの新しい治療法は、患者さん一人ひとりの状態やニーズに合わせて選択されます。最新の治療法について詳しく知りたい場合は、当クリニックの医師にご相談ください。